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2009年 07月 28日
寛平ちゃん達は、太平洋を横断したヨット「エオラス号」にて、今度は大西洋を横断中である。
ニュー・ヨークの埠頭North Coveを出発したのが7月の14日、既に2週間を海上で過ごしている計算である。 最初は船酔いで辛かったようであるが、確か数日だか一週間だか経った頃から、身体が完全に海上仕様になったというようなことがブログに書かれていた。 「慣れ」と一言で片付けることも出来るが、その「慣れ」というのはつまり、身体及び精神というものが、訓練次第で「あるもので何とかする」状態に持っていくことが可能な性質を持っているということである。 このことは、日々の生活と身体や心持ちの状態を注意深く観察していると、わりによく分かることのように思う。 そのコツをつかむと、人生は随分と生きやすくなるのだろう。 大西洋横断が始まってからの比企さんのブログを読んでいると、寛平ちゃんと比企さんというのは、その「あるもので何とかする」ということのコツを上手くつかんだ生き方をしているなと思う。 もちろん、私は彼らの人生のほんの何万分の一かを見ているだけではあるのだが、海上での毎日の生活の様子には、私自身がこのように日々を生きたいと願い、まだまだ上手くできないことのほうが多いと実感することが映し出されており、読んでいると非常に気持ちが良い。 例えば、7月21日付けの「またまたまた・・・トラブル」のところでは、エンジンの作動に関係する重要な部品の故障を発見し、修理を試みるも、結果的には新しいものと交換するという事態についての記述がある。 そこには、焦りやイライラや悲壮感などといった否定的な要素がほとんど見受けられない。 文章になっているということは、全てが終了し、落ち着いた状態で書いたものであるのだろうから、そうした要素を排除することも可能かと思う。 しかし、実際に、修理、交換の様子を撮影した「エンジン奮闘記」の動画のほうでは、そうはいかない。 そもそも、そのような大変な最中に撮影をしようと思い、実際にそれを行っていること自体が凄いと思うが、それは別にしても、比企さんの、作業と平行して聞こえてくる、落ち着いたというよりは、むしろ、のんびりしたとも言えるような口調での状況説明がとても印象的であった。 寛平さんのほうも、テキパキと比企さんから出される指示に従って手助けを行っている。 背景にある事態をよく分からずに動画を見たならば、それほど大したことが起きているとは思わないのではないか。 また、このようなこともあった。 前出のエンジンの話の前日(ガルフの恐怖/揺れる船上での優雅な食事)のことである。 船の上での食事を、たまには、きちんとした形でしようということで、比企さんが、50センチX30センチくらいの木で出来たお盆のようなものをどこかから引っ張り出してきた。 短いほうの一辺を船の長椅子の背のようになった所に引っ掛ける。 お盆の底には直径2センチほどの小さな丸い穴が開いており、そこへ、床の上に立てた棒状のものを差し込んで固定すると、簡易テーブルが出来上がる。 それを挟んで2人が長椅子に座ると、ちょうど、飛行機の座席の間に細長いテーブルが出てきたような按配で食事が出来るというわけである。 大喜びで丼飯やら味噌汁やらラッキョウの入ったタッパーやら何やらを載せるのであるが、そこへ波がやってきて船が大きくかしげる。 よく見ると、お盆の上には、車のトランクの下に敷くような、滑り止め効果のある布が広げられているのだが、船の大きな揺れとともに、お盆ごと大きくかしげるものだから、当然、上に載せた碗類は滑るどころか飛び跳ねてしまう。 丼飯のご飯が飛び散り、タッパーの中の味噌汁はミキサーされ、ラッキョウは無残な形でヒシャげている。 そうした苦境の中を、比企さんは笑いの壺か何かに嵌ってしまったのか、ゲラゲラ言いながら、飛び散ったご飯粒を必死に口へ運んでいくのである。 食事を取るどころの騒ぎではない。 このような態度を平たく言うと、所謂、「その場の状況を楽しむ」とか「楽観的」とか「前向き」とかいった言葉で表すことになるのだろうが、そういうことよりは、何か、もっと、越えたものがあるような感じがしている。 その状態をマイナスと意識するのではなく、ゼロ(本来の姿)と意識しているのではないだろうか。 動画を見て同じように感じた方も多いと思うが、エンジンの話も飛び散るご飯粒も、それが証拠に、マイナスの状況を本来あるべき姿、つまりゼロにしたというよりは、ゼロだったものをプラスの状態に持っていったというような印象が残る画像である。 「あるもので何とかする」ということのコツとは、そういうことなのかもしれない。 そのような騒ぎの中、現地時間の今日(28日)の朝、アースマラソンの中間地点を通過したとのことである。 西経44度30分がその地点であるのだそうだ。 日程からすると、まだ5分の1くらいしか経っていないことから考えると、これからのヨーロッパ、中東、アジアの土地を走るのに、どれだけの時間と労力を要するのかが想像できるというものである。 地図を見ると、大西洋横断自体も半分くらいのようだ。 8月の第3週目辺りにはフランスなのだろう。 それまで、また、ゆっくりと、寛平ちゃんと比企さんの海上生活を見ていきたいと思う。
by bp1219
| 2009-07-28 23:26
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